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En toi Pythmeni tes TeXnopoleos
[電脳世界の奥底にて] |
PXchfon パッケージ
~pLaTeX文書のフォントを簡単に変更~
- 2016/04/03:ダウンロードのリンク先を GitHub に変更した。
- 2010/05/16:0.5 版で PXjafont パッケージと統合したのに伴い、 PXjafont のページにあったプリセット指定の説明をこちらに移動。 その他、色々と説明を追加。
- 2009/11/16:例の中の otf の bold オプションを削除。
概要
pLaTeX / upLaTeX の文書の標準のフォント(明朝・ゴシック)を ユーザ指定のものに置き換える。 dvipdfmx 専用である。 他のフォント追加パッケージと異なり、 使用するフォントを LaTeX 文書中で指定するので、 一度パッケージ(ファイル 1 つのみ)をインストールするだけで、 任意の日本語フォント(ただし等幅に限る)を使うことができる。 UTF / OTF パッケージにも対応している。 欧文部分を同じ日本語フォントで置き換えることも可能である。 (ただしこの場合は複数のファイルのインストールが必要。)
対応環境
- TeX 処理系: pLaTeX2e / upLaTeX2e
- DVI ウェア: dvipdfmx
和文フォントのみの設定
ここでは、欧文フォントは変更せず、和文フォントのみを 変更する場合の使い方について説明する。
インストール
この利用法の場合、 アーカイブにあるファイルを全てインストールする必要はなく、 pxchfon.sty だけがインストールされていれば十分である。 これを TeX システム中の適切なディレクトリに移動すればよい。 フォント関連のパッケージはインストール・設定が非常に煩雑で あることが多いので、このパッケージではできるだけ単純に なるよう目指している。
W32TeX を C:\usr\local にインストールした場合は、 次のフォルダ(新たに作る)に移動する。 移動した後 mktexlsr を実行する。
- pxchfon.sty → C:\usr\local\share\texmf-local\tex\platex\PXchfon
あるいは、もっと簡単に、pxchfon.sty を文書ファイルと 同じ場所に置いてもよい。
使い方
pxchfon パッケージをオプション noalphabet
付きで
読み込む。
\usepackage[noalphabet]{pxchfon}
この後、プレアンブルで
\setminchofont{‹ファイル名›} \setgothicfont{‹ファイル名›}
で、明朝とゴシックに対応するフォントを指定する。
ここで指定するのはフォント名(例えば「IPA明朝」)ではなく
ファイル名(例えば「ipam.ttf」)であることに注意。
なお、フォントファイルが TTC 形式(複数の TTF 形式のフォント
を 1 つにまとめた形式;拡張子 .ttc
)
の場合は、使いたいフォントの
番号(例えば「MS 明朝」は msmincho.ttc の 0 番)を
指定する必要がある。
この場合は次のように指定する。
\setminchofont[‹番号›]{‹ファイル名›} \setgothicfont[‹番号›]{‹ファイル名›}
このページの末尾に、MS フォントと Microsoft Office 付属の フォントについてのファイル名を挙げておく。 Web 上で配布されているフリーフォントの場合、多くはアーカイブ展開後に フォントファイルを手動でインストールする方式になっているので、 元のアーカイブを調べればフォントファイルの名前が判ると思われる。
例
IPA フォントを指定する例。
\documentclass[a4paper]{jsarticle} \usepackage[noalphabet]{pxchfon} \setminchofont{ipam.ttf} % IPA明朝 \setgothicfont{ipag.ttf} % IPAゴシック \begin{document} \section{はじめに} この文書は IPA フォントを用いて出力されています。 \section{おわりに} 欧文部分は Computer Modern のままです。 \end{document}
.otf
であることがある
(具体的には ver003.000)。
これを用いる場合は、\setminchofont
等に指定する
ファイル名を変更する必要がある。
W32TeX で Windows にインストールされた IPA フォントを
使う場合はそれ以外の点では違いはない。
MS フォントを指定する場合はプレアンブルを次のようにする。
\usepackage[noalphabet]{pxchfon} \setminchofont[0]{msmincho.ttc} % MS 明朝 \setgothicfont[0]{msgothic.ttc} % MS ゴシック
IPA フォントや MS フォントを「もっと簡単に」指定する には「プリセット指定」の小節を参照。
UTF/OTF パッケージと併用する場合
和文フォントの置き換えは UTF/OTF パッケージのフォントにも適用される。 以下に OTF パッケージを用いた例を示す。
deluxe
なし)で \setgothicfont
設定の
フォントを有効にするには bold
か noreplace
を指定する必要があった。
0.3 版で多ウェイトに正式に対応したのに伴いこの制限はなくなった。
\documentclass[a4paper]{jsarticle} \usepackage[noalphabet]{pxchfon} \setminchofont{ipam.ttf} % IPA明朝 \setgothicfont{ipag.ttf} % IPAゴシック \usepackage{otf} \renewcommand{\theenumi}{\ajLabel\ajMaru{enumi}} %+ \renewcommand{\labelenumi}{\theenumi} %+ enumerate を丸数字で \begin{document} 「2001 年宇宙の旅」「時計じかけのオレンジ」等の現代文明の本質を 鋭い視点で問いかける作品で知られる、米国の映画監督は誰か。 \begin{enumerate} \item 森\UTF{9DD7}外 \item \UTF{9127}小平 \item ウィリアム・ヘンリー・ゲイツ\UTF{2162}世 \item \textgt{この中からどうやって選べというんだ?} \end{enumerate} \end{document}
無論、フォントが JIS 基本漢字以外の文字(グリフ)を持っていなければ 何の意味もないのだが、大抵の日本語用 TrueType/OpenType フォントは いわゆる「Windows 機種依存文字」(丸数字①,②…等)は持っているので、 OTF パッケージでこれを使う用途が考えられる。 なお、上の例で用いた「IPAフォント」は JIS X 0213 の文字集合に 対応していて例の文書中で指定された文字を全て出力できる。
OTF パッケージの多ウェイト設定の場合
OTF パッケージで deluxe
オプションが
指定されている場合は、明朝・ゴシックともに 3 ウェイトが
使用可能となっていて、加えて、丸ゴシックのファミリも使用可能である。
この場合は、次の命令で各ウェイト毎に置換するフォントを
指定できる。
\setlightminchofont[‹番号›]{‹ファイル名›} ― 明朝・細 (\mcfamily\ltseries) \setmediumminchofont[‹番号›]{‹ファイル名›} ― 明朝・中 (\mcfamily\mdseries) \setboldminchofont[‹番号›]{‹ファイル名›} ― 明朝・太 (\mcfamily\bfseries) \setmediumgothicfont[‹番号›]{‹ファイル名›} ― ゴシック・中 (\gtfamily\mdseries) \setboldgothicfont[‹番号›]{‹ファイル名›} ― ゴシック・太 (\gtfamily\bfseries) \setxboldgothicfont[‹番号›]{‹ファイル名›} ― ゴシック・極太 (\gtfamily\ebseries) \setmarugothicfont[‹番号›]{‹ファイル名›} ― 丸ゴシック (\mgfamily)
また、\setminchofont
と \setgothicfont
は
各々明朝・ゴシックの 3 ウェイト全てを指定の(同じ)フォントに設定する。
注意: 欧文フォントの置き換えを有効に するためには 3 ウェイト全てが置換されている必要がある。 従って、例えば 2 ウェイトしか使わないという場合は
\setmediummincho{minchoW3.ttf} % 中ウェイトを設定 \setboldmincho{minchoW6.ttf} % 太ウェイトを設定 % 細ウェイトが未設定のため欧文に対しては無効
ではなく
\setmincho{minchoW3.ttf} % まず3ウェイト全部を設定 \setboldmincho{minchoW6.ttf} % 太ウェイトの設定を変更
とする必要がある。
欧文フォントも変更する場合の設定
インストール
欧文フォントも変更する場合は、 Full 版のインストールが必要である。 残念ながら、Lite 版ほど簡単ではないので、 具体的な手順は説明書(README ファイル)を見てほしい。 ただ、ファイルを移動するだけで、何かの設定ファイルを編集する 必要はないので、普通のフォントパッケージよりは容易である。 (これまで見たように、設定を書き込む先は LaTeX 文書と いうわけである。)
使い方
pxchfon パッケージを読み込む時に alphabet
オプションを指定する。
あとは和文のみの場合と全く同じである。
alphabet
/noalphabet
オプションについては、通常は alphabet
の方が既定なので
省略可能である(以下の例でも省略している)。
ただし、プリセット指定を使用した場合は、
逆に noalphabet
が既定となるので、
欧文の置換を行うには alphabet
オプションが必要になる。
例
以下の例では、「明朝」の部分を「HG教科書体」に置き換えている。 このように和文の部分に特徴的な書体を使う場合は、 欧文部分も同じ書体にしないと奇妙に見える。
\documentclass[a4paper]{jsarticle} \usepackage{pxchfon} % オプションなし \setminchofont[0]{hgrkk.ttc} % HG教科書体 \begin{document} \section{テストです} この文書は「HG教科書体」フォントを用いて出力されています。 このフォントは Microsoft Office に付属するもので、 Office がインストールされている Windows マシンなら このフォントを使うことができます。 \end{document}

\setgothicfont
がないので、ゴシック体(および欧文のサンセリフ)は従来通りの
フォントが使われる。
ただし、上の例の組版結果を見ればわかるように、 欧文部分が等幅になっているため非常に拙く見える。 これは、「後からフォントを好きなものに置き換える」 という方法では、フォントによって同じ文字の幅が変わる プロポーショナルフォントには対応できないからである。
プリセット指定(一括指定)
このパッケージの元々の意図は、 標準のフォントを普段使っているものと全く別の書体に変えることであったが、 例えば「普段使う設定が複数ありそれを簡単に切り替えたい」 という場合にも有用である。 そこで、pTeX において広く行われている設定をパッケージ内に組み込んで、 パッケージオプションでそれを呼び出すという機能を追加した。 例えば、「OTF パッケージで、IPA フォントと Microsoft Office のフォントを使う」 設定にするには、該当の LaTeX 文書に
\usepackage[ipa-dx]{pxjafont}
を書くだけでよく、これにより内部で適切なフォントが
\setminchofont
等で設定される。
元々は PXjafont という別のパッケージとの組合せで提供されていた機能であるが、 0.5 版からこのパッケージに組み入れることにした。
プリセット指定のパッケージオプション
pxchfon のパッケージオプションとして以下に列挙する プリセット名を与えることで、使用する (埋め込む;PDF 出力が前提なので)フォントを一括指定できる。
単ウェイト用の設定
noembed
: フォントを埋め込まない。 (生成された PDF は閲覧者の環境によっては正常に表示されないかも知れない。)ms
: MS フォント(「MS 明朝」「MS ゴシック」)を使用する。ipa
/ipa-ttf
: IPA フォント(ファイル拡張子が .ttf;「IPA明朝」「IPAゴシック」)を使用する。ipa-otf
: IPA フォント(ファイル拡張子が .otf)を使用する。kozuka4
: Pro 仕様の小塚フォント(「小塚明朝 Pro R」「小塚ゴシック Pro M」)を使用する。kozuka6
: Pr6 仕様の小塚フォント(「小塚明朝 Pro-VI R」「小塚ゴシック Pro-VI M」)を使用する。kozuka6n
: Pr6N 仕様の小塚フォント(「小塚明朝 Pr6N R」「小塚ゴシック Pr6N M」)を使用する。hiragino
: ヒラギノフォント「ヒラギノ明朝 Pro W3」「ヒラギノ角ゴ Pro W6」を使用する。
多ウェイト用の設定
OTF パッケージの deluxe
オプション使用時に有効になる。
明朝 2 ウェイト、ゴシック 3 ウェイト、丸ゴシック 1 ウェイトを設定する。
ms-dx
: MS フォントおよび Microsoft Office 付属の日本語フォントを使用する。ipa-dx
/ipa-ttf-dx
: IPA フォント(拡張子 .ttf)および Microsoft Office 付属の日本語フォントを使用する。ipa-otf-dx
: IPA フォント(拡張子 .otf)および Microsoft Office 付属の日本語フォントを使用する。hiragino-dx
: ヒラギノフォント「ヒラギノ明朝 Pro W3・W6」「ヒラギノ角ゴ Pro W3・W6・W8」 「ヒラギノ丸ゴ Pro W4」を使用する。
ちなみに、W32TeX の既定の設定では、
pTeX 標準と UTF パッケージについては noembed
相当、
OTF パッケージについては kozuka4
相当になっている。
(だから多くの W32TeX ユーザには OTF パッケージの既定設定は
「使えない」のである。)
ipa(-dx)
は拡張子が .ttf の
IPA フォントを意味する。
最新の IPA フォントでは拡張子が .ttf であるので変更した。
参考: フォントの設定を始めるにあたってまず大事なことは 「自分がどのフォントを持っているか」だったりする ;-) 以下で pTeX で(素人が)使うことが多いと思われるフォントに ついて簡単に解説する。
- MS フォント: Windows ユーザなら必ず持っている。 Mac で Microsoft Office をインストールした人も…(使いたいかは別)。
- Microsoft Office 付属のフォント: 文字通り、Microsoft Office に属する何らかの製品(Microsoft Excel 等) がインストールされていれば持っている。
- IPA フォント: OSS iPedia のサイトから ダウンロード可能なフリー(自由)フォント。 どの環境でも入手可能であるが、Windows や Mac OS X では最初から インストールされている訳ではない。
- 小塚フォント: Adobe の多くの有償の製品に付属するフォント。 「Pro」「Pr6」「Pr6N」のどの版であるかは恐らく発売された時期に 依存するのだと思う。
- ヒラギノフォント: Mac OS X 付属のフォント。 その他の環境の人はフォント単体を購入しない限りは持っていない。
- モリサワフォント: あー、聞いたことあるね ;-)
OTF パッケージを用いる場合はフォントが対応する文字の範囲にも 注意する必要がある。
名称 | 構成フォント | CP 932 | JISX 0208 | JISX 0213 | AJ 1-5/6 |
---|---|---|---|---|---|
MSフォント | 「MS 明朝」等 | ○ | ○*1 | ○*3 | × |
MS-Office付属 | 「HG明朝E」等 | ○ | △*2 | × | × |
IPAフォント | 「IPA明朝」等 | ○ | ○ | ○ | × |
小塚フォント*4 | 「小塚明朝 Pro-VI R」等 | ○ | ○ | ○ | ○ |
ヒラギノフォント | 「ヒラギノ明朝 Pro W3」等 | ○ | ○ | ○ | ○ |
[*2] (※) の文字の字形がない。やはり (u)pTeX では問題にならない。
[*3] Windows XP 以降の版に付属のもの。 それより前は JIS X 0208/0212 のみ。
[*4] Pr6/Pr6N の場合。 この「6」は Adobe-Japan1-6 対応であることを示す。 さらに「N」は 2004JIS 対応字形が既定であることを示す。 Pro 版は Adobe-Japan1-4 までの対応。
サンプル
単ウェイトで和文のみ設定する場合。
\documentclass[a4paper]{jsarticle} \usepackage[ipa]{pxjafont} % IPA フォントを埋込 %\usepackage[ms]{pxjafont} % MS フォントを埋込 %\usepackage[kozuka]{pxjafont} % 小塚フォントを埋込 %\usepackage[noembed]{pxjafont} % フォントを埋め込まない \begin{document} 森喜朗と内田裕也とが墨田区の松坂屋に行くところを想像した。 ちなみに欧文は Computer Modern のままです。 \end{document}
オプションに alphabet
を加えると、
欧文が和文と同じフォントになる。
多ウェイト(OTF の deluxe
オプション指定)の場合。
\documentclass[a4paper]{jsarticle} \usepackage[deluxe]{otf} \usepackage[ipa-dx]{pxjafont} % IPA フォント + Microsoft Office のフォント \begin{document} % \UTF と \CID の無駄遣い ;-) \mcfamily 森\UTF{559C}朗と\textbf{内田裕\UTF{4E5F}}とが% % 明朝(中・太) \gtfamily \CID{3709}田区の\textbf{\UTF{677E}坂屋}に行く% % ゴシック(中・太) \mgfamily ところを想像した。 % 丸ゴシック \end{document}

Windows マシンにインストールされているフォントのファイル名
等幅の日本語フォントのみを列挙する。
\setminchofont
で指定する形で記述するが、
もちろん \setgothicfont
の方が適切なものもある。
- Windows 付属のフォント:
\setminchofont[0]{msmincho.ttc}
― MS 明朝\setminchofont[0]{msgothic.ttc}
― MS ゴシック
- Microsoft Office 付属のフォント:
\setminchofont[0]{hgrmb.ttc}
― HG明朝B\setminchofont[0]{hgrme.ttc}
― HG明朝E\setminchofont[0]{hgrpre.ttc}
― HG創英プレゼンスEB\setminchofont[0]{hgrgm.ttc}
― HGゴシックM\setminchofont[0]{hgrge.ttc}
― HGゴシックE\setminchofont[0]{hgrsgu.ttc}
― HG創英角ゴシックUB\setminchofont{hgrsmp.ttf}
― HG丸ゴシックM-PRO (*) (※)\setminchofont[0]{hgrkk.ttc}
― HG教科書体\setminchofont{hgrskp.ttf}
― HG正楷書体-PRO (*) (※)\setminchofont[0]{hgrgy.ttc}
― HG行書体\setminchofont[0]{hgrpp1.ttc}
― HG創英角ポップ体
注意: 上掲のフォントの中で (※) 印を付したものは PDF 文書への埋込が制限されている。 「Print & Preview」という制限であり、具体的には 「該当のフォントを埋め込んだ文書は編集不可でなければならない」 ことを要求する。 dvipdfmx で編集不可な PDF 文書を作るには、 以下のような暗号化オプションを付して dvipdfmx を実行すればよい。
dvipdfmx -K 128 -S -P 2580 <他オプション> <入力>.dvi
この場合、「Owner password」と「User password」の入力を 求められるが、「User password」は空にしておく。 これで、Acrobet で編集操作を行う時には「Owner password」 が求められるが、Adobe Reader 等で単に閲覧する時には パスワードの入力が不要となる。
ちなみに、この「Print & Preview」制限のフォントを埋め込む設定にして dvipdfmx を実行した場合は、
** NOTICE: This document contains `Preview & Print' only licensed font **
というメッセージが表示される。 この時、埋込は実行されている(従って、 ライセンス要件を満たさない文書を作成した可能性がある) ので十分注意すること。
参考:Font Redistribution FAQ(Microsoft サイト)。 この内容から判断する限り、Microsoft 製品に付随するフォントについては、 フォント自身に記された埋め込み制限情報を信用すればよいように思える。